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日本学術振興会人文・社会科学プロジェクト「伝統と越境」主催

シリーズ《伝統と創造》

last updated: 2009.4.7


■研究報告?`???????n?¢?÷

・平成20年度研究報告『伝統から創造へ3』[report09.pdf 2.8MB]
・平成19年度研究報告『伝統から創造へ2』[report08.pdf 2.9MB]
・平成18年度研究報告『伝統から創造へ』 [report07.pdf 2.4MB]


■公開イベントレポート

2006.2.18 1.箏が今に伝えるもの、伝えたいもの
2006.3.18 2.歌のことば、女のことば
2006.9.30 3.スコティッシュ・ダンスは国境を越えて


1.箏が今に伝えるもの、伝えたいもの

米川 裕枝(箏曲演奏家)
小塩さとみ(宮城教育大学助教授)


箏曲演奏家の米川裕枝さんをお迎えして、演奏とトークで、箏曲の伝統と創造の関係に迫ります。

演 奏:米川裕枝・岡崎敏優・中川敏裕

日 時:2006年2月18日(土)14時開演(13時30分開場)
会 場:聖徳大学10号館12階小ホール(JR松戸駅東口徒歩1分)
主 催:日本学術振興会人文・社会科学プロジェクト「伝統と越境」
後 援:松戸市教育委員会、聖徳大学音楽研究センター

入場無料(先着100名)

案内パンフレット(クリックすると拡大されます)

開催レポート

「伝統と越境」代表 高松 晃子


 伝統的なものといわれる芸術文化・言語文化がどのように「伝統性」を獲得し、それを伝えてきたか、作り手と一緒に考える企画の1回目。地歌筝曲演奏家の米川裕枝さんとお弟子さんの岡崎敏優さん、中川敏裕さんをお招きしたレクチャー・コンサートを開催いたしました。当日は、定員を超えるたくさんのお客様が、美しいお琴の音色と楽しいお話を堪能されました。

 まずは古典曲《乱》でしっとりとしたお琴と三絃の合奏を楽しんだ後、古典のなかでも新しい《千鳥の曲》の演奏へ。しかも《千鳥》では、吉沢検校のオリジナルと、裕枝さんのお母様、人間国宝の米川敏子さんの手付けの2種類を並べて聞かせていただきました。同じ曲がこんなに変化するとは!聞いている我々もさることながら、ご本人も、「普段こんなことはいたしませんから」とおっしゃりながら、2つの違いにあらためて感じるところがおありのようでした。


米川裕枝さん(左)と小塩さとみ
※画像をクリックすると拡大されます。

 続いて、今回の進行役である小塩さとみさんとの対談に。そこでは、家元の娘としてどんな教えを受けられたのか、ほかの流派とどこが違うのか、お母様やお祖父様とご自身との相違などについて、お話がありました。印象的だったのは、家元の娘として特別な教育を受けたわけではないということ。でも、できないと「どうしてできないの?」と言われてしまう。お弟子さんと一緒に同じことをしている中から、重要なことを学び取っていかなければならないのだそうです。「あなたはできなければならない」という一種の帝王学を学ぶわけですね。それはかえって辛いかもしれません。

 休憩後は、裕枝さんの作品《月彩》。オリジナルの調弦を使用した、幻想的で何とも素敵な曲でした。作曲の方法をお聞きしたところ、曲作りは調弦を決めるまでがたいへんで、調弦が決まればその曲のイメージが半分ぐらいはできあがるそうです。あとは、お琴を弾きながら横で録音し、13弦譜に拾い上げる。メロディーを考えてほかのパートを付けていくのが基本ですが、縦の響きを優先することもあるそうです。どうしてもメロディー優先でつくるので、古典的な「手の動きで音が決まる」式にはならない。だから古典的な手はあまり出てこないそうです。伝統的であると言われるお琴の世界ですが、新しい作品もどんどん生まれています。作るときには、古典と違うものにしたいという意識が働くようで、オリジナルの調弦を考案したり、古典的な手が入らなかったり、洋楽器と共演したり、いろいろな工夫があるのですね。

 最後に、アンコールとして米川敏子さん作曲のかわいらしい小曲、《花》のプレゼントがありました。古典を弾くのも作曲するのも両方とも私たちの責務、とおっしゃる裕枝さんのお言葉が、筝曲界をリードする次期家元らしく、とても頼もしく感じられました。

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2.歌のことば、女のことば 
 ― その継いできたもの ―

阿木津 英(歌人)
菅  聡子(お茶の水大学助教授)


Part 1. お話しの部 歌人としての私〜女性歌人の作品あれこれ
Part 2. 実践の部 歌を作る〜学べばわかる伝統の世界


日 時:2006年3月18日(土)14時開演(13時30分開場)
会 場:聖徳大学10号館12階小ホール(JR松戸駅東口徒歩1分)
主 催:日本学術振興会人文・社会科学プロジェクト「伝統と越境」
後 援:松戸市教育委員会

入場無料(先着50名)

案内パンフレット(クリックすると拡大されます)

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開催レポート

「伝統と越境」代表 高松 晃子


 伝統的なモノゴトについて、作り手と一緒に考える企画の第2弾。歌人の阿木津英さんをお迎えして、短歌における伝統と創造について、実践を交えながらお話を伺いました。当日は、早くからたくさんのお客様がいらっしゃいました。

 第1部は、「歌人としての私」と題して、阿木津さんが短歌を志したきっかけから短歌の歴史、女流歌人の系譜などについてお話を伺いました。「和歌」と「短歌」の違い、俳句と短歌の微妙な立ち位置など、基本的なところが腑に落ちてすっきり。和歌は体制の象徴として機能してきたもの。そういう意味では、現在「和歌」をつくるということはほとんどないわけですね。もうひとつ興味深かったのは、女性が文学界で活躍することの偶然と困難です。古くから女性の先生や作り手がいた和歌、短歌は、俳句とは比較にならないほど女性向きであったそうです。女性の歌の系譜もまたいろいろ。のびやかに性愛を歌う人、「主婦」の喜びを誇らしげに歌う人、全共闘世代として社会に立ち向かう人、使う言葉も口語体に文語体、定型に自由律とさまざまです。その中で、阿木津さんは、良妻賢母的近代家族の枠内に自足できないおのれを見つめながら、歌のことば、女のことばを模索し、世に問うてきました。


阿木津英さん(右)と菅聡子
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さて、休憩を挟んだ第2部は、阿木津さんによる短歌のレッスン。10首挙げられた歌の中から3首を選び、感じたことやちょっとおかしいと思ったところを発表します。生徒に扮した聞き手の菅さんは、「こんなの高校以来だわ」と冷や汗をにじませながら大奮闘。でも、次々とおかしなところを指摘するのはさすがです。さらに、阿木津さんの講評を聞いて納得。私たちが日常ごく普通に使う言葉でも、短歌に入れると「?」という言葉、視線をちょっとずらすだけでぐんと生き生きしてくるもの、無理に文語体にして失敗しているものなど、指摘されて初めてわかったことがたくさんありました。阿木津さんは、「自然体」という言葉に疑問を呈します。「自分のことばで語る」のがいいというのは、近代の呪縛である。短歌というジャンルにおいては、先人の歌を学んでことばと形式に対する感度を上げ、そのスタイルにふさわしい表現をするのが「自然」なことなのであって、先達のもち札になかったもの=新しいもの=「自分のことば?」はすなわち不自然なものだ、というのが阿木津さんのお考えでした。伝統とはどのようなものだろうか、という、このプロジェクトの核心にして返答困難な問いに対しては、「この歌のここにこのことばは変、これはいい、という感覚」とお答えいただきました。その感覚は、先人の歌を学んで初めて形成されるもの、そのプロセスが伝統を学ぶことなのだそうです。「和歌・短歌は日本の伝統」とはよく聞くフレーズですが、今回の阿木津さんのお話を心に刻んで、お手軽な表現に踊らされないようにしなくては、と用心しきりです。

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3.スコティッシュ・ダンスは国境を越えて
 ― グローバルに維持されるローカルな伝統 ―

岡田 昌子(ロイヤル・スコティッシュ・カントリーダンス・ソサエティ公認教師)
高松 晃子(聖徳大学教授)


 スコティッシュ・ダンスとは、文字通りスコットランドのダンスのこと。つまりはその土地の(ローカルな)ダンスですが、いまや世界中で愛好されています。どのようにして地域の伝統がグローバルな存在に なったのでしょう。

 RSCDS公認教師の岡田昌子さんをお迎えして、越境するスコティッシュ・ダンスの伝統の謎に迫ります。東京スコティッシュ・ブルーベルクラブと八丁堀SCD教室のメンバーによる実演もあり ます。聞き手は本学教授の高松晃子です。

日 時:2006年9月30日(土)14時開演(13時30分開場)
会 場:聖徳大学2号館1階奏楽堂
主 催:日本学術振興会人文・社会科学プロジェクト「伝統と越境」
後 援:松戸市教育委員会、聖徳大学音楽研究センター

入場無料(先着150名)

お問い合わせ:聖徳大学音楽学研究室 高松aktak@seitoku.ac.jp

案内パンフレット(クリックすると拡大されます)
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開催レポート

「伝統と越境」代表 高松 晃子

 3回目は少々趣向を変え、ある地域の文化がどのように外に出て行くか、そのテーマにぴったりの「スコティッシュ・ダンス」に焦点を当てて考えていく企画にしました。ゲストは、ロイヤル・スコティッシュ・カントリーダンス・ソサエティ(RSCDS)公認教師の岡田昌子さん。案内役の高松との対談を軸に、ダンス・カンパニーによる実演も交えた贅沢な舞台になりました。

 第一部は「伝統の誕生」。スコティッシュ・カントリーダンスというジャンルがどうやってできあがったかを解明するセクションです。まずは、どんなダンスか知りたい、ということで、1曲のダンスがどのように構成されているか、完成品を部品に分解するように説明していただきました。フォーメーションの連結とプログレッシブ(最初に踊ったカップルが先に進んでいく)な進行がこのダンスの基本で、たいへん論理的にできていることがよくわかりました。ただ、このわかりやすさの背景には、RSCDS(1923年設立)とその創立者ミス・ミリガンの努力があった、というダンスの成立事情に話は進みます。つまり、RSCDSは、だれもが同じダンスを同じように踊れるように、古いダンスを整え、「規格品」を作っていったのでした。しかし、規格化・標準化については、守り伝えるべきとされた3つのポイントがありました。1にテクニック(ステップ)、2にマナー、3に形です。また、RSCDSがダンスをどのように普及させていったか、その手段についてこれも3つ?人・場所・物?示していただきました。これらが丁寧に実演で示され、地域的多様性よりも世界に通用する普遍性を優先させたRSCDSの方向性が、よくわかりました。1923年を境に、地域のスコティッシュ・カントリーダンスは規格化された「ナショナル・ダンス」として生まれ変わったのです。


左から、進行役の高松晃子、ゲストの岡田昌子氏、
東京スコティッシュ・ブルーベルクラブと八丁堀SCD教室のみなさん
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 「伝統の越境」と題された第二部では、ナショナル・ダンスでありながらインターナショナル・ダンスとなったスコティッシュ・カントリーダンスの現状と、創作の可能性についてお話しいただきました。できたてほやほやのダンス、Masakoの初演に立ち会えたのは何とラッキーだったことでしょう!ダンスを創作する方法として、フォーメーションをアレンジしたり、新しいフォーメーションを作ったりすることができるそうです。それに対して、ダンスのセットの形やステップ、プログレッシブであること、フォーメーションをつなげて作るという手法は、変えてはいけないのですね。伝統を守りつつ新しいものを生み出すためには、やはり手をつけてよいところといけないところがあるようです。

 後半にかけて舞台は次第にヒートアップ。音楽の革新というトピックを実演で盛り上げてくださったピアニスト、カントリーダンサーから変身したバッグパイパーにハイランド・ダンサーが登場すると、盛り上がりは最高潮に。最後は優雅なカントリー・ダンサーの描く正確なフォーメーションを堪能しながら、ローカルな伝統をワールドワイドに維持するシステムを編み出したRSCDSの選択は、ある意味で大胆、しかし結果的には吉と出たように感じました。

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