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心理教育相談所レポート

 心理教育相談所の主催・参加したイベントや講演会などのレポートをお届け致します。

【2011/12/10】

東日本大震災とこころのケア

 2011年12月10日(土)、聖徳大学心理教育相談所主催のシンポジウム「東日本大震災とこころのケア ―被災者・支援者の方へ―」を開催いたしました。
 当相談所主催のシンポジウムは初の試みです。

【第Ⅰ部】 基調講演「被災地の学校現場における心のケアの実際」

 基調講演として、兵庫教育大学名誉教授・神戸カウンセリング教育研究所代表の上地安昭先生に、被災地の学校現場におけるこころのケアの実際を、事例を交えながらお話しいただきました。

 上地先生は2011年5月から7月までの3ヶ月間にわたり、被災地の高校へ緊急派遣カウンセラーとして支援に行かれたそうです。
 地域の防災拠点としての学校の役割が重要であるということや、学校内においては養護教諭やスクールカウンセラーの日常からの相談活動が重要であるというお話がありました。
 また、非常時には最終的に自分の命を自分で守らなければならないということから、学校における命の教育の重要性についてもお話されました。
 被災地の大変な状況と、そのような大変な状況に置かれても少しずつ自分の力で前へ進む、そんな人間の力強さが感じられるご講演でした。

【第Ⅱ部】 シンポジウム「東日本大震災とこころのケア ―被災者・支援者の方へ―」

 「こころのケア」という視点からシンポジウムを行いました。シンポジストは、当相談所の所員と、臨床心理士として被災地で支援活動を経験した教員です。
 まずは、当相談所の末永清所長。被災地としての千葉県の状況と、震災支援における心理教育相談所の役割についての話をいたしました。直接被災された方を支援するだけでなく、支援に行く人に対する教育や、支援後のケアといった『支援者に対する支援』という間接的な支援の重要性について語りました。

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 続いて、聖徳大学児童学科の鈴木由美教授です。鈴木教授は、実際に被災地へ支援に行かれた話や、電話相談による支援の話をいたしました。
 不用意な支援がかえって被災された方を傷つけてしまうこともある、そばにいるということが大きな支援にもなることがあるとのことでした。
 電話相談では当初、避難場所や放射線についてなど具体的な情報提供を求める内容が多かったのが、最近では、人との関係がうまくいかなくなった、というような、こころの側面の相談が増えたように感じているそうです。

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 次に、当相談所の所員で精神科医の中川和美准教授が、医療従事者という立場から、地域復興に欠かすことのできない産業領域への支援を中心に、日常から負担を抱えている人へのケアの重要性を話しました。

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 最後に、当相談所の杉嶋洋子研究員が、被災地の学校支援を振り返って、限られた期間で行う支援のあり方について話しました。現場の先生方が普段の力を発揮できるような支援も意味があるのではないかとのことでした。

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 参加者の方からは、震災の後、科学や経済に縛られすぎない価値観が必要になるのではないか、大学という教育現場の中でどのような考えを持っているか、という質問がありました。
 その質問に対し、上地先生からは「これまで、科学や経済は私達の生活を大変豊かにしてきた。これからは、こころの側面まで含めた<真の幸福>とは何かを探求することが必要になるでしょう」という回答がありました。


 複数の視点から意見が交換され、日常の中での防災や、普段からの「こころのケア」の重要性を考えさせられるシンポジウムとなりました。
 ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!


~講演会のお知らせ~
 次回の講演会は3月24日(土)13:30~15:00、東洋大学長の竹村牧男先生による「エコ・フィロソフィを考える -東日本大震災をふまえて-」を予定しております。これからの日本人の生き方についてお話をうかがいます。お誘いあわせの上、ぜひご参加ください!

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