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心理教育相談所レポート

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【2012/07/07】

トラウマとは何か

7月7日(土)、心理教育相談所主催講演会「トラウマとは何か ~正しい理解で、自分と家族を守る~」を開催しました。
講師には、武蔵野大学の小西聖子(こにしたかこ)教授をお招きしました。
最近よく聞かれるようになった“トラウマ”という言葉。トラウマとはそもそもどういったものなのか。そして私たちが当事者になった時、一体どうすれば良いのかについてお話いただきました。

◇そもそもトラウマとは?
 トラウマとは、元々ギリシャ語で傷を意味する言葉で、トラウマ体験とは、圧倒されるような状況で人間がさまざまな心理的影響を被ることだそうです。自分の対処能力を超えた出来事を体験したり見たりした時、その体験がトラウマ体験になるそうです。
 現在の医学的な定義からいうと、トラウマとなる体験とは、①死ぬ恐怖、大けが、身体の統合性の危機、②実際に経験したり、見たりする、③恐怖、無力感を覚える、という3つの側面を持つそうです。
 トラウマ体験によって実際に見られる反応としては、不眠、気分の落ち込み、不安、落ち着かない、感情が無くなってしまったように感じる、いつも緊張する、怖くて色々なことができなくなる、世の中が信じられなくなるなど、色々な物があり、そういった症状が継続すると、PTSD(外傷後ストレス障害)という診断がなされることがあるそうです。

◇どうしてこういうことが起きる?
 強いストレスを感じると、自分をストレスから守るためにさまざまな反応が起こります。すごい恐怖のはずなのに何も感じなかったり、全く眠れなかったり、いつも読んでいるような新聞や本が読めなくなったりします。
こういった反応は、失恋や、学校で先生に怒られるくらいのことでも起こるそうです。普通はすみやかに消えますが、中には2~3週間、長いと数ヵ月残ることもあるとのことです。そこでうまく回復できないと、症状がずっと残ってしまい、日常生活がうまくいかなくなってしまうそうです。

◇私たちにできることは?
では、自分や周りの人がトラウマ体験の当事者になったとき、私たちに何ができるのでしょうか。
周りの人がやれることとしては、まず休養をとらせる(無理に話を聞き出そうとしない)、衣食住を安定させるなど、自然な回復を妨げないことです。そして、悪意がなくても、「大したことない」とか「忘れなさい」などとは言わないことが大事だそうです。また、本人が医療にかかる場合、それに反対しないことも大事です。

もし自分がトラウマ体験の当事者となってしまった時は、可能な範囲でいつもと同じ生活を続けたり、心身のリラックスを図ったり、今は安全であるということをまずは頭で理解するとよいとのことです。そしてもちろん、専門家に相談することも有効です。

 さまざまな自然災害や犯罪が起こった時、よく「こころのケア」が必要だということが言われます。「こころのケア」というと、苦痛を軽減して、元通りの元気でハッピーな状態に戻すことのように感じられますが、小西教授によると、それは誤解であるとのことです。大切な物をなくしたり、大きなショックを受けた人が、すぐにハッピーになれるなんてありえないし、そういうことを忘れるということもありえません。トラウマ体験をすっかり忘れて、全く何もなかったかのようにその後の人生を送るなんてことはできないのです。むしろ、自分に起きた悲しい出来事を、ちゃんと悲しいと思える人が健康なのだそうです。

当日は大変多くの方にご来場いただき、会場は超満員となりました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

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