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心理教育相談所レポート

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【2015/07/25】

カール・ロジャーズを知っていますか? 
―カウンセリングを生みだした人の願い―

 平成27年7月25日(土)に、9回目となる聖徳大学心理教育相談所主催講演会「カール・ロジャーズを知っていますか?~カウンセリングを生みだした人の願い~」を開催いたしました。
 講師として、関西人間関係研究センター代表の畠瀬直子先生をお招きし、カウンセリングの生みの親ともいえるアメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズ(1902‐1987)について、カウンセリングを生みだした背景や、彼の人柄をご紹介していただきました。

カウンセリングの誕生
 畠瀬先生は、カウンセリングにつながる児童相談所でのカール・ロジャーズのエピソードをお話しされました。

 カール・ロジャーズが29歳の時、非行少年の母親の相談を受け持ったそうです。
 当時は非行少年の立ち直りのためのマニュアルがあったそうですが、その少年はなかなか立ち直れなかったといいます。
 やれることをすべてやりつくし、それを非行少年の母親に伝えたカール・ロジャーズでしたが、その母親から、子どもの相談ではなく、自分自身の相談を受けてもらえるかと聞かれ、受けることにしたそうです。
 すると、今まで非行少年の母親として語ってきた話と、迷いを抱える一人の中年の女性としての話では、内容が全く違ったそうです。
 このとき、カール・ロジャーズは、どのような意見をその母親に伝えたらよいかわからず、ただひたすらに相手の話を聞いていたといいます。
 すると不思議なことに、子どもの非行が落ち着いていったというのです。

 カール・ロジャーズは、この経験をもとに児童のための相談の本を執筆し、全米で読まれることとなりました。
 こうして、困っている人に指示をすることではなく、相手の話をしっかりと聞くことを本質とするカウンセリングの基礎が広がりました。
 そして大学に活動の場を移し、研究者としての歩みが始まったそうです。

カウンセリングの「共感」
 畠瀬先生は、カウンセリングで重要なのは、深く畏敬を込めて相手の話を受け止めることだといいます。
 カウンセリングに来る人は、人生の中で一番困っている状態にあり、畏敬を込めて彼らの訴えを受け止めるには、カウンセラーの努力が必要なのだといいます。

 今日では、誰もが「共感」という言葉を日常で用いますが、「共感」という言葉は、もともとカウンセリングから生まれたそうです。
 共感とは、相手の側に立って、その人が感じている気持ちを、外側からではなく、その人の内側から理解しようとすることだそうです。
 人間は、自分にとって一番苦しくて、一番人には知られたくないことを、なぜか誰かにわかってほしいという矛盾を抱えており、そんな矛盾した人間をそのままに受け止めるのが、共感だそうです。

カウンセリングで自分が変わるということ
 人間の心の内面が変わるという事は、大きく世界が変わるという事とつながっていると、畠瀬先生はいいます。
 一人一人が自分の心の中に革命を起こすことで、それが人間社会の進化に役立つだろうとのことでした。

  参加された皆様からは、「カウンセリングができるまでの背景が伝わり、とても有意義だった」「もっと多くお聞きしたかった」「カール・ロジャーズの人となりを知ることができて楽しかった」といったご意見をいただきました。

 ご参加くださった皆様、誠にありがとうございました。

今後も聖徳大学心理教育相談所では、さまざまな講演会を開催する予定です。どうぞご期待ください。

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