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心理教育相談所レポート

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【2018/06/16】

教員のための心理学講座Ⅲ
~生徒のやる気をちょっとだけ高めるためにできること~

 聖徳大学大学院臨床心理学研究科、聖徳大学心理・福祉学部心理学科、聖徳大学心理教育相談所主催心理学講座「教員のための心理学講座Ⅲ~生徒のやる気をちょっとだけ高めるためにできること~」を、平成30616()に開催いたしました。
 講師として、本学大学院臨床心理学研究科の矢口幸康准教授がお話しました。

「やらなければいけないことがあるけれど、やる気が起きない…。」そんな時、やる気を高める方法を知りたいと思う方も多いのではないでしょうか。

 本講座では、大きく分けて①やる気とは何か、②やる気は何によって妨害されるのか、③やる気を出すために毎日の生活でできる工夫 の3点について解説しました。

やる気とは何か
 矢口准教授は始めに、心理学における「やる気」について説明しました。心理学では、「やる気」の源を「動機」と呼び、やる気を持たせることを「動機づけ」と言います。その動機をつくりだしているのが欲求です。
 人間の欲求にはどのようなものがあるのか、マズローという心理学者が提唱した「自己実現理論」を用いてお話しされました。
 この理論では、生命を維持するための欲求(例:食べる、寝る)である「生理的欲求」と、社会のなかでより良く生きるための欲求(例:集団に所属したい)である「社会的欲求」があると考えます。
 例えば、テストの成績を上げたいといった欲求は、社会的欲求であるとみなすことができます。

 テストの成績を上げるためには、勉強の動機づけを高める必要があります。
 動機づけには「外発的動機づけ(例:ご褒美をもらいたい)」と「内発的動機づけ(例:関心がある)」があります。
 ある行動を始める初期には外発的動機付けを使い、それを維持するためには内発的動機づけが有効であると説明しました。

やる気は何によって妨害されるのか
 矢口准教授によると、何かが「できない」「したくない」という動機の欠乏は、性格が原因なのではなく、何らかの欲求が満たされていないことが原因の1つとして考えられるそうです。
 先のマズローの理論では、まず「生理的欲求」など下位欲求を満たすことで初めて「社会的欲求」の段階へ進むことができると考えます。
そのため、現段階で何の欲求が満たされていないのか探ることが重要になります。

 特に、複数の欲求がほぼ同じ強さで同時に存在するために、行動を決定することが難しいという「コンフリクト(葛藤)」状態は、原因がわからない「やる気が起きない」現象のもとになっている可能性があります。
 
やる気を出すために毎日の生活でできる工夫
 動機づけを高めるために重要なポイントとして、「目標となる行動を設定すること」があげられます。
 例えば「勉強のやる気を高めたい」とき、やる気の高さを測定することは難しいですが、机に向かう回数は測定することができます。
 そのため「机に向かう回数を増やす」など具体的で簡単な目標を設定することが大切であるそうです。
 簡単な目標で成功体験を繰り返すことで、少しずつ問題解決に近づくことができます。  
 本講座では、簡単なゲームを参加者間で実施し、実際にちょっとした認知の変容を体験する機会が設けられました。

 受講された方からは、「今まで自分が持っていなかった視点だったので大変参考になりました」等の感想をいただき、非常に満足度の高い心理学講座となりました。

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