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心理教育相談所レポート

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【2018/10/13】

聖徳大学心理教育相談所主催第15回講演会
「痛みとの上手な付き合い方」

 聖徳大学心理教育相談所主催第15回講演会「痛みとの上手な付き合い方」を平成301013日(土)に開催いたしました。
講師として、松弘会三愛病院 医師の土居真太郎先生をお招きしました。

痛みとは何か
土居先生は最初に、痛みの定義についてお話しされました。国際疼痛学会(IASP)の定義(1981)によると、痛みとは「組織の実質的あるいは潜在的な障害に伴う、あるいは、そのような障害を表す言葉で表現される不快な感覚あるいは、情動体験」と定義されています。
なかでも、痛みの種類は大きく分けて3種類あると土居先生はお話されました。
1つめは、侵害受容性の痛みです。これは、けがをしたときなどに感じる、一般的に「痛み」と呼ばれるものを指します。
2つめは、神経障害性の痛みです。これは、からだの神経が変わってしまうことで起こる痛みを指します。
3つめは、心因性の痛みです。侵害受容性と神経障害性以外の痛みを指します。最近では心理社会的な痛みとも呼ばれ、脳の機能の低下などにより痛みを強く感じることが明らかになってきました。

痛みはどのようにして感じるのか
 次に、痛みはどのようにして「痛み」として認識されるのかということについて、土居先生はお話しされました。
 まず、転んでケガをすると、痛みは末梢神経から脊髄に入って、大脳で痛みとして認識されます。つまり、痛みを感じる場所は脳ということになります。
 痛みが慢性化してしまうメカニズムに関わっているのが、記憶です。例えば、戦争や交通事故などにより大きな怪我や恐ろしい体験をした場合は痛みが強く記憶されるため、慢性痛になりやすいそうです。
 
慢性痛を減らす方法
では、慢性痛がある場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
慢性痛に対しては、「感覚的側面」、「認知的側面」、「情動的側面」の3つの側面からアプローチする方法があると土居先生は言います。
「感覚的側面」に対するアプローチとは、痛みに対して直接行うアプローチのことです。例えば、鎮痛薬を飲んだり、神経ブロック注射を行ったりすることを指します。
「認知的側面」に対するアプローチとは、物事の捉え方や考え方を変えることによって痛みの感じ方を変えるといったアプローチです。例えば、認知行動療法、マインドフルネスなどがあげられます。
「情動的側面」に対するアプローチとは、モノアミンと呼ばれる神経伝達物質の分泌代謝異常に働きかけるアプローチのことです。心理学的な手法に加えて、抗うつ薬や向精神病薬の服用があげられます。
 この3つの側面のうち、どれか1つでもアプローチをすれば、他の側面についても良い効果が期待できるため、取り組みやすい側面から治療を進めることに意味があるそうです。

 痛みを慢性化させないために大事なこと
 また、土居先生によると、痛みを慢性化させないためには、早期に仕事に復帰することや趣味をすることが大切だそうです。社会で働くことで、「痛くても自分はやっていける」という自己肯定感を高めることが重要になります。
 一方、痛みを持っている患者さんを支える家族も、家事などを全てやってあげるという姿勢でいるのではなくて、「一緒にやる」と考えることが大切です。その人の権利を尊重して、痛みがあっても役割を与えることを理解することが必要です。「痛くても体を動かす」ことが痛みの治療には最も必要な考え方です。

 参加者からは「他へ、自分へ、どう行動し、考えていくか大切なことを学びました」「痛みへの向き合い方がよくわかり、参考になりました」等の感想をいただきました。

 質疑応答の時間でも、参加者から多くの質問をいただき、充実した講演会となりました。

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